ふわふわ不和

都市と死

【寄稿】創造と継承~映画の父に捧ぐ、HIKAKIN&SEIKINの『今』

今回の記事は、匿名希望氏の寄稿をそのまま掲載する。

 

 

創造と継承~映画の父に捧ぐ、HIKAKIN&SEIKINの『今』

去る11月9日、今日のYoutubeの顔といっても差し支えないであろうHIKAKIN&SEIKINの新曲、「今」が配信リリースされた。

 

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MVの一番の見せ所はなんといっても終盤の「長尺の逆再生一発撮り」だろう。


結論から言おう。

本MVは、HIKAKIN&SEIKINによる、映画の父リュミエール兄弟に捧げるオマージュである。

 

リュミエール兄弟といえば、世界初の実写映画『工場の出口』を手がけただけでなく、『壁の崩壊』において、逆再生の手法をいちはやく動画に取り入れたことでも知られている。

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この「壁の破壊」というモチーフはHIKAKIN&SEIKIN名義で発表された最初のMV、『Youtubeテーマソング』にも見出すことができる。

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壁を
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壊す


また、SEIKINの2ndシングル『Keep Your Head Up』の歌詞中においても、「今、壁を越えていこう」というメッセージが強調されている。

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Youtuberという職業は長らくイロモノ扱いされてきたし、今でもそのように捉えられているのかもしれない。YouTuberの先駆者としてHIKAKIN&SEIKINが目指していたのは、他ならぬ「素人動画」「詐欺」といった偏見という壁の打破である。


映画という光の芸術を開発したリュミエール兄弟―奇しくも、リュミエールLumière)はフランス語で光という意味を示す。映像を通じて人々の心を動かすYoutuberのパイオニアであるHIKAKINの本名が「開發光」であることに、単なる偶然以上の意味を見出したくなる。

 

(続く)

日高屋素描 1

財布のポケットからクシャクシャに丸めていた【モリモリサービス券】を引っ張り出し、テーブルに叩きつける。店内のチャイムのほとんどはいくら押しても反応しない。叫ぶ。誰もこない。店の奥からは不安になるタイプの咳が聞こえる。再び叫ぶ。店員が振り向く。店内は幅に比して奥行きがやたらと広く、そのせいかオペレーションは壊滅的だ。券をぶっきらぼうに差し出し中華そばを注文する。左隣のサラリーマン風の男はクチャラーで、そのうえ麺が伸びるのもお構いなしに聖教新聞を読みふけっている。この店舗で異様に食べ方の汚い人間に出くわすのは珍しくもない。「ホッピーセットはな、大人のハッピーセットじゃ」とつまらない冗談を聞いたことがあるような気がする。意外というか、味噌ラーメンのカロリーは野菜たっぷりタンメンよりも多い。湯が沸く音。右隣のブルーカラー風の男は昼間からサワーを頼んでいる。ちょい飲み路線の奏功。そういえば、看板メニューであるところの「ラ・餃・チャ」を頼んでいる客を見たことがない。「ラ・餃」で事足りるせいだろうか?どことなく才気を感じさせるベトナム人アルバイトが中年女性店員からレジスターの使い方を教わっている。「領収書というのは、この、この、長細ーい紙のことです。わかる?」テーブルに麺が運ばれてくるやいなや胡椒を3回振りかけラー油を一周しする。何十回とオーダーしているから、一口啜らずともスープの味は熟知している。店の奥からはさっきよりも大きな咳が聞こえる。中華そばとラーメンの差異はちょうど百貨店とデパートの違いのようなものだ。そういえばバクダン炒めを頼んだことがない。右隣の男は鼻をかんだナプキンを空になったラーメンの丼にぽいぽいっと放り込んでいる。ラー油を入れすぎた気がする。咳込む。会計。店員から【モリモリサービス券】を受け取るやいなやクシャクシャに丸め、手早く財布のポケットにしまい込む。

 

熱烈中華食堂

140

140字の枠を決して超えることのないおれの思索、長くツイッターを主戦場にしているせいだろうか。先日読んだ岩倉文也の詩集。ツイート群は縦書きの28×5に組み直されどこか馴染みのないもののように映った。定型詩に仕上げるため推敲を重ねたのだろうか、はたまた140が降りてくるのだろうか。